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「あゝ、荒野」 [映画]


あゝ、荒野 (特装版) Blu-ray BOX

あゝ、荒野 (特装版) Blu-ray BOX

  • 出版社/メーカー: バップ
  • メディア: Blu-ray

寺山修司の『あゝ、荒野』は大好きな小説。
父親の暴力を受けて育ったバリカン建二と母親に棄てられた不良の新宿新次が
ひたすら殴り合うことで、己の孤独を吐き出していく‥という物語。
でもこれはボクシングが真にハングリースポーツだった1960年代だから成立した話で
現代(近未来)設定に置き換えたら台無しだ‥と、正直思っていました。
ところが映画『あゝ、荒野』は、そんな予想に反してなかなかの力作。
5時間以上という長尺ながら、前のめりで観てしまいました。

その理由のほとんどは、バリカンと新次を演じた二人の俳優
ヤン・イクチュンと菅田将暉の演技。
特に、原作では新次より年下のバリカンを10歳年上という設定に変え、
ヤン・イクチュンをキャスティングしたセンスには唸りました。
緻密に繊細に演じるヤンと強烈な瞬発力がある菅田の化学変化は素晴らしく
二人がトレーニングを重ねボクサーらしい体型になっていくにつれ
痺れるような緊張感が伝わってきてゾクゾクします。

ただ、前後編の前編は圧倒的に面白かったものの
後編は、新次と宿敵・裕二の試合のシーンがピークで
本当の見せ場となるはずの最後の試合がいまひとつ盛り上がらないのが
見ていてもどかしい感じがしました。
それでも、最近の日本映画にはなかった“熱”を感じる作品として
日本映画が好きな方に、おすすめします。


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